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前町政に厳しい判決
小山町土地売却「違法で無効」判決 静岡地裁「町側が価格漏えい」

前町政に厳しい判決

前町長が、ホテル会社社長らに頼まれて町有地を売った契約は違法であって無効である。

静岡地方裁判所で判決

 

 小山町住民9人(原告)小山町長(被告)を相手取り、小山町が平成27年10月31日に全国労働金庫協会(以下、労金)から足柄地区の所有地25,520.48㎡を購入した件と、その土地を平成28年11月30日にホテル建設のためYに売却した手続きに問題があるので、小山町長は前町長に対して損害を賠償させるように求めた裁判の判決が令和4年3月18日に、静岡地方裁判所で申し渡されました

 住民が町の監査委員に監査請求をしてからおよそ6年を経ての判決です。

実質的に住民側の全面勝利

 内容としては、住民側の主張が全面的に採択されたものでした。

 

 1件目(労金からの土地購入)については住民が指摘した課題はあるが、違法とまでは言えない、という内容でした。

 しかし2件目の小山町がホテル会社に土地を売った件は「売却した手続きは違法でありそれゆえ契約も違法である。そして、その違法が重大なもの(地方自治法の趣旨を没却するほどの違法)であるから契約自体が無効である。」というもので前町政を厳しく断罪しました。

[ 資料1 判決文36・37・38頁、アンダーラインとローマ字表記は筆者加工

 A・前町長、B・病院関係者、C・社長、X・小山町が買った土地の所有者、Y・ホテル会社 ]

 これは、小山町とYとの土地売買契約は違法であって、Yが建てたホテル用地は今現在も小山町の土地であることを意味します

 なお、住民側の請求は棄却されましたが、請求の内容は、池谷町長は前町長に対して町に与えた損失を請求せよ、などでありました。

 

 しかし、一連の小山町の事務処理が違法であって無効であるという判決は出されたばかりであり、町の対応については誤りを正す適切な時間的猶予を与えられるべきであるから、現時点では住民側の請求は棄却するという内容です

[資料2 判決文39・40頁アンダーラインとローマ字表記は筆者加工]

令和4年3月24日 静岡新聞
ホテル土地裁判 Map.png
ホテル土地裁判 静岡新聞 R4 3月24日付け記事.png
和栄裁判 岳麓記事.png
和栄裁判 日刊静岡記事 編集済み.png

 異例な訴訟費用負担

 

 形の上では、原告の請求が退けられたので被告側の勝訴ですが、実質的には原告側の全面勝利と言うべき内容です

 ですから、訴訟費用も、常識的には請求を棄却された原告(住民側)が負担するものですが、この裁判においては、「訴訟費用の負担については、本件*プロポーザルが違法であり、本件売却が無効であるとの判断に鑑み、その一部を被告(小山町)に負担させるのが相当であるから」主文の通り「訴訟費用は、両事件を通じてこれを2分し、その1を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。」という異例なものでした。

*プロポーザル・・・価格の高低のみではなく、提案の内容などを重視して請負などの業者を決める入札の一形式。

事実認定

 では、小山町役場がした事務処理のどこが違法だったのでしょうか。事件の概略は以下の通りです。

[資料3 判決文34・35頁]

・前町長は、先輩の県議会議員から依頼され、また社長も訪問があった(株)Yのホテル建設に協力することにした。

当時、労金は御殿場市内の病院へ売り渡す話を進めていたが前町長は先輩の県会議員や社長の直接訪問を受けたYの要請を受けて、両者の間に入り、労金に行き町へ売るように要請し、そのようになった。

・前町長及び小山町は、労金から購入した土地の約半分をホテル用地とすることとし、事業者をプロポーザル方式で募集した。

・小山町はプロポーザル審査要綱を定め、項目ごとの配点を「応募者の適格性・60点」「事業内容及び実施方法・200点」「事業の効果・40点」「事業用地の買取価格・50点」で合計350点とした。

・最高点の者の点数が280点に満たない場合は審査委員会で検討することとした。

・小山町は、予定買取価格を13,000円/㎡、総額で1億6100万円とした

応募はY1社であったが審査委員会は開かれた。Yの買取申し出価格は13,030円/㎡、総額で1億6103万7770円であった。予定価格に対し、㎡単価で0.23%、総額で0.023%の乖離。

・審査員の平均点は、291.2点であった。この内買取価格の評価は、30円/㎡上回ったことで40点プラスと算定された。30円が無かったら40点が減ざれるので基準点に達しなかった

Yは金融機関から30円カットしたらと勧められたが、どうしても欲しい土地なので30円を残したと供述している。

・Yは13,000円/㎡でも頑張った額だとも供述している。

*裁判官の判断……天網恢恢(てんもうかいかい)疎(そ)にして漏らさず

善は必ず栄え、悪は必ず滅びる、天の網の目は一見粗いようだが、決して悪を見過ごすことはない。 悪行には必ず天罰が下るということ

職員による価格漏えいがあった

・小山町が労金から買った町有地を売却することは、前町長がYに頼まれて始まったことであり、前町長や小山町はプロポーザル方式を行う以前からこの土地をYに売却することを相当程度想定していたと認められる

土地売却予定価格とYの申し出価格は不自然なほど近接している

・これらから、プロポーザルの手続きにおいて、小山町側からYに対し予定価格が漏えいされていたと認めるのが相当である。

審査委員会の基準点と配点を考慮すると、予定価格が事前に漏えいしていたという事実は審査結果に・重大な影響を与えており、その瑕疵は看過しがたい

従って、

「Yを選定した本件プロポーザルの手続きには重大な違法があるというべきであるし、本件プロポーザルの結果に基づいてYとの間で行われた本件売却も違法というべきである。」

本件プロポーザルでは、予定買取価格が事業予定者として選定されたYに漏えいした事が認められ、その瑕疵は看過しがたく、Yを選定した手続きに重大な違法があると言える

 また、予定買取価格が漏えいしたという事実は、本件売却の相手方であるYにおいても明らかであったと言える。したがって、Yとの間で行われた本件売却は無効というべきである。

 要するに、小山町役場は初めから特定の会社Yに売却することを念頭にしていた訳だが、役場職員による価格漏えいがあったので、この会社との土地売買契約は無効だと判決されたのです。

 

 この判決を受けて小山町役場はどうするのでしょうか。

 小山町がYに土地を売却した契約は、無効だとの判決ですから、Yのホテル用地は小山町の物であり、町はYが町に払った1億6千万円を返すことになります。

 

 町とYとの契約は無効だと判決されたので、初めからやり直さなければならないという気の遠くなる作業が待っているのです。

 

 役場職員による犯罪が招いた結果ですが、解決にはまた余分な税金を使うことになります。

 

一部の町議はこの取引に反対していた

 小山町議会では、こうなることを予測した議論が交わされていました。

 平成28年9月定例会で、労金から町が買い受けた竹之下の土地1万2,360㎡をYに売る議案が審議されました。議案に反対する議員は、この取引は裁判になり、違法との判決になると(ホテルの撤去など)原状復帰が困難になる、と注意を喚起していました

[資料4 町議会議事録]

 賛成多数で取引は可決されましたが、反対議員が危惧した通りの困難な事態となってしまいました

重症!小山町役場の順法意識欠如

 また、役場職員の尋問等を通じて、文書管理等小山町役場の杜撰な事務処理も指摘され、今回の価格漏えいと相俟って役場のコンプライアンスが問われる裁判となりました

 小山町役場は、過去10年来、町民の些細な罪が問われる事件も町民が高齢にもかかわらず厳しく告発しているのに対し、職員が数億円もの税金に不正に手を付けても一切問題にしていません。今回の価格漏えいという犯罪についても、税金を給料とするという意味で同類の役場職員の行為ですから町長は懲罰しないに決まっています。

 今回の裁判で、プロポーザルにおいて小山町職員による価格漏えいがあったと断定され、重大な違法行為があったから土地処分が無効と判決された異常事態なのです。判決文を読のめばわかるように、ホテルの土地は今現在小山町の財産だと、判決されたのです。

 そして、住民の請求が棄却されたのは、町長に行動を起こす猶予期間が与えられるべきだという理由であって、重い宿題を与えられたのです。

 池谷町長は、一部新聞紙上で「指摘されたことは今後の事務の参考にしたい。」と話していますが、あなたに与えられた課題は山積しています

 

 また、価格漏えいは無かったと思うという役場の発言も報道されています。しかし、今回の判決は、足掛け6年をかけ証拠資料の検証や行政訴訟としては異例な証人尋問まで行った末での判断なのです日本の司法制度を無視した軽い発言には驚かされます。

 町民への謝罪と再発防止

 小山町役場がまず初めにしなければならないのは、町民の財産である人・物・金を違法行為に使ってしまったことを町民に謝罪するべきです

 そして早急に取り組むべきは、弁護士などを入れた第三者機関により不正行為の実態を明らかにし、関係職員の責任も明らかにし、再発の防止に向けた仕組みを作ることでしょう

小山町・違法路線、拡大展開中

 また、前町長が始めた民間企業の仕事を役場が請け負うという信じられない違法行為も継続中です。足柄サービスエリア周辺地区開発のカギを握る幹線道路事業は、合同会社からの委託を受けて小山町が建設を進めてきた。令和2年度町議会での決算審査で3億7千万円もの税金を小山町役場は合同会社に譲渡してしまったことが露見した。合同会社からの負担金が入らなかったために役場職員が背任行為に走ってしまったものです。

 我々オンブズマンが、3億7千万円の流れについて明らかにするよう求めていますが、町はいまだに説明しません。違法な会計操作をしたので説明できないのです

 それどころか、令和3年度の補正予算で合同会社からの委託金収入を協力金にすり替えてしまいました合同会社の負担金(委託金)で整備すべき道路整備を、町民の税金を充てて整備(協力金)する形にした露骨で悪質な利益供与であることが疑われます。

 町政改革を期待されて当選した池谷町長ですが、残念ながら前町長が敷いた路線を盲目的に増幅するばかりです

 

 原告側の弁護士の「今回の判決を受けて、小山町役場、小山町議会、小山町民がどのように行動するのかが問われています。」との話は重く響きました。

役場職員よ、しっかりしてくれ!!

 このレポートを書いていたら役場が報道機関と議員に別添の文書を配っていることが分かりました。

[資料5 役場経済産業部・都市基盤部が作成し報道へ配った裁判報告と企画総務部が作成した報告]

 

 主文の文字はその通りですが、原告の請求を棄却した理由は判決文で詳しく述べています

[資料2 判決文 39・40頁]

 

 要するに役場とホテル会社との契約が無効だとの判決は下されたばかりであり、プロポーザルのやり直しとか1億6千万円をホテル会社に返すとかの事務手続きや、ホテル会社が価格漏えいに主導的にかかわったとまでは言えないし小山町とホテル会社との間で今後どういう交渉が行われるかなどを見る必要がある。したがって現時点では原告の請求は退けるというものです

 ですから、原告の請求を棄却する、との主文を読んで一息つくのではなく、行く先の困難さにため息をつかねばならないのです

次に企画総務部が町会議員に配った報告書です。

 価格漏えいという町の違法行為によってホテル会社との契約が無効になった、という重大事件には全く触れていない、悪質な情報操作を図った文書です。判決文の原告の請求が退けられた箇所のみを繰り返し、前町長ら関係役場職員は問題なかったかの印象を町民に植え付けようとしたのでしょう。裁判費用も少額だからいいでしょうとでも言いたいのか。勝訴でも裁判費用を求められたことの実情は隠したままで

 

また、3月30日付の静岡新聞に、29日の記者会見の池谷町長発言が載っていました。

[資料 静岡新聞]

ホテル土地裁判 静岡新聞220330記事.png

 裁判で違法で無効だと判決されたホテル会社との契約も現状のままにし、職員による価格漏えいがあった と断定された件についても、「職員を信じる」として何の調査もしない、というのです。

 要するに、静岡地裁の判決は間違っていると言っているのです

 行政機関のトップとは思えない良識の無さです。

 小山町も法治国家の行政機関という位置づけです。裁判所の判決が間違っていると主張したいなら、せめて第三者機関を設置して一連の事務処理を検証するべきでしょう

町民を代表しての発言ではありません。

 

残念ながら小山町は正に、失われた10年継続中 です。

原因は小山町役場の順法意識の欠如にあります。

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